こんにちは、FPエミリーです!
実家の「名義」について、親が元気なうちから話しているご家庭は、あまり多くないと思います。
今、親が普通に暮らしている家を見て、
「この家、将来は誰の名義にする?」
「父が亡くなったら、母と子どものどちらが相続する?」
なんて、普段の生活の中ではなかなか話題にしませんよね。
でも、いざ相続が起きると、避けて通れないのがこの『実家相続問題』です。
たとえば、父が亡くなり、母がそのまま実家に住み続けることになった場合。
「住むのは母なんだから、母が相続するのが自然かな。」
そう考える一方で、
「でも、いずれ子どもが引き継ぐなら、最初から子ども名義にしておいたほうがいい?」
と迷うこともあります。
実は、この「誰が実家を相続するか」は、単なる名義の問題ではありません。
その後の相続税や、家自体の管理、またきょうだい間のトラブルまで、大きく関係してくるんです。
だからこそ、「今住む人は誰か」だけで決めるのではなく、「この家を、この先どうしていきたいのか」まで考えて決めることが大切です。
ちなみに、FPとして私が基本的に第一候補として考えているのは、
「最終的に子どもが実家を引き継ぐ予定なら、子どもが相続する」
という方法です。
ただし、子どもが相続するなら、母が安心して住み続けられる仕組みまでセットで考える必要があります。
一方で、
・母自身がこれからも長く家を管理したい
・母の判断で将来売却したい
・そもそも子どもは実家を引き継がない
という場合には、母が相続するほうが自然なケースもあります。
今回は、
・母が相続する場合のメリットと注意点
・子どもが相続する場合のメリットと注意点
・共有名義をおすすめしにくい理由
・母の住まいを守る「配偶者居住権」
・認知症対策として使われる「家族信託」
についてまとめました!
⸻
① 母が実家を相続するメリット
まず、母が実家を相続するケースから考えてみましょう。
一番分かりやすいメリットは、「住む人と、家の所有者が同じ」ということです。
自分名義の家なので、基本的には自分の判断で修繕したり、貸したり、売却したりできます。
特に、
「子どもは実家を引き継ぐ予定がない」
「母が元気なうちに売却する予定」
という場合には、母が相続したほうが、その後の判断もしやすくなります。
また、「子ども名義の家に住ませてもらっている」
という感覚を持たずに済む点も、人によっては大きいと思います。
実家は単なる資産ではなく、長年暮らしてきた「自分の家」。
そのため、母自身が「自分で持っていたい」と希望するのであれば、その気持ちも無視できません。
また、母が相続するもう一つの大きなメリットが『相続税』です。
配偶者には、相続税の負担を大きく抑えられる制度があり、代表的なのが『配偶者の税額軽減』
配偶者が実際に取得した財産について、
・1億6,000万円
または
・配偶者の法定相続分相当額
のどちらか多い金額まで、原則として配偶者本人の相続税がかかりません。
さらに、父母が一緒に暮らしていた実家の土地については、『小規模宅地等の特例』が使える可能性もあります。
これは、一定の要件を満たせば、自宅の土地について330㎡まで、相続税を計算するときの評価額を80%減額できる仕組みです。
たとえば、相続税評価額が3,000万円の土地なら、
3,000万円 → 600万円
として計算できる可能性があります。
ここだけを見ると、「それなら母が相続したほうがいいのでは?」と思いますよね。
ただ、実家の相続で見たいのは、
「父が亡くなったときにいくら税金がかかるか」
だけではありません。
⸻
②母が実家を相続するデメリット
父が亡くなり、母が実家を相続すると、その家は母の財産になります。
ということは、将来母が亡くなったときに、その実家は再び『相続の対象』になります。
いわゆる「二次相続」という状況ですね。
そして二次相続では、一次相続より条件が厳しくなることがあります。
相続税には、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
という基礎控除があります。
たとえば父が亡くなったとき、母と子ども2人の3人が法定相続人なら、
【3,000万円+600万円×3人=4,800万円】
が基礎控除です。
その後、母が亡くなり、子ども2人が相続人になれば、
【3,000万円+600万円×2人=4,200万円】
まで、基礎控除の金額が下がります。
さらに、二次相続では配偶者がいません。
そのため、先ほどの「配偶者の税額軽減」も使えません。
つまり、「父の相続では母に多く渡したほうが税金が安かった」としても、
「母の相続まで含めたら、結果的に税負担が増えた」ということもあり得るんです。
そのため、相続税対策を考えるなら、
「今回の相続だけ」ではなく、「父の相続+母の相続」まで含めて見ることが大切です。
また、税金と同じくらい考えておきたいのが、母の認知症です。
たとえば、親子ともに
「元気なうちは実家で暮らして、施設に入ることになったら売ればいいよね。」
そう考えていたとします。
ところが、実際に施設への入居を考える時期になった頃には、母の認知症が進んでいるかもしれません。
もし、不動産を売却する契約について十分に理解して判断できない状態になっていたら、母の財産である家を「子どもだから代わりに売る」ということはできません。
そのため、
「実家を売ったお金を施設費用に充てよう」
と考えていても、いざ必要になったときに現金化できない可能性があります。
高齢の親が不動産を所有する場合には、
「今管理できるか」だけではなく、
「将来、自分で判断できなくなったらどうするか」
まで考えておきたいところです。
⸻
③最終的に子どもが引き継ぐなら、最初から子どもが相続する方法も
では、父が亡くなったときに、子どもが実家を相続したらどうでしょうか。
子どもが相続するメリットの一つは、
「母の判断能力と、家の所有権を切り離せる」
ことです。
実家の所有者が子どもであれば、母が将来認知症になったとしても、家そのものの管理を母が行う必要はありません。
たとえば、「母が施設へ入り、実家が空き家になった」という場合。
所有者である子どもが、
・売却する
・貸し出す
・修繕する
・自分たちで使う
といった判断をしやすくなります。
最終的にその家を子どもが引き継ぐことが決まっているのであれば、
「一度母へ渡して、その後また子どもへ」
という形にしないほうが、管理はシンプルになることがあります。
また、もう一つ軽減されるのが『相続登記』です。
母が一旦実家を相続する場合は、父 → 母
そして母が亡くなったときに、母 → 子
と、基本的には2回の相続登記が発生します。
一方で、最初から子どもが相続するなら、
父 → 子の1回で済みます。
相続による所有権移転登記では、原則として固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。
たとえば、土地と建物の固定資産税評価額が合計2,000万円なら、
2,000万円×0.4%=8万円。
もし手続きを司法書士に依頼する場合には、その報酬も必要です。
もちろん、
「登記費用が1回減るから、子どもが相続すべき」
というほど単純な話ではありません。
ただ、「最終的には子どものものになる」
と、最初から決まっている実家であれば、
一度母を経由することのメリットとデメリットは、比較してみたほうが良いかもしれません。⸻
④ 「公平だから共有名義」は、あとで困ることがある
ここまで読むと、むしろ
「母か子どものどちらかに決めず、みんなで持てばいいのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
たとえば、
・母 2分の1
・長男 4分の1
・長女 4分の1
のような共有の形もあります。
数字だけを見ると、公平なように見えますよね。
でも、不動産については、「公平に分けること」と、
「将来管理しやすいこと」は必ずしも同じではありません。
共有不動産を全体として売却する場合、原則として共有者全員の合意が必要です。
たとえば、母は「施設費用に使いたいから売りたい。」
長男としては、「思い出の家だから残したい。」
長女に至っては、「早く売って、現金で分けてほしい。」
こんなふうに意見が分かれれば、話はなかなか進みません。
さらに、共有者の一人が亡くなると、その持分がその人の相続人へ移ります。
長男の持分を長男の配偶者や子どもたちが相続すれば、共有者はさらに増えていきます。
最初は3人だった共有者が、世代交代を重ねて5人、6人と増えていくことも…。
所有者が増えるほど、「売る」「貸す」「建て替える」
といった場面で意思をまとめるのが難しくなります。
ちなみに、土地は母、建物は子ども、という分け方も、法律上は可能です。
ただし、
・売却したい
・建物を取り壊したい
・建て替えたい
・土地を活用したい
という場面では、土地と建物それぞれの所有者が協力する必要があります。
権利関係や税金も複雑になりやすくなるため、特別な理由がなければ、土地と建物はまとめて相続するほうが管理しやすいことが多いです。
公平に分けたいからといって、実家を安易に共有名義にするのは、慎重に考えたいところです。
⸻
⑤子ども名義でも母の『住む権利』を守るために
ここまで読むと、
「それなら、子どもが相続する一択では?」
と思うかもしれません。
でも、ここにも大事な問題があります。
その家に実際に住むのは母なのに、所有者は子ども。
たとえば母からすると、「この家はもう私の家じゃないんだ。」と感じるかもしれません。
そして、もっと重要なのが、
「母が安心して住み続けられるのか」
という点です。
子どもに何かあったらどうなるのか。
子どもが家を売りたいと言い出したらどうなるのか。
きょうだい間で揉めたらどうなるのか。
つまり、「所有権を誰に渡すか」と「母の住まいをどう守るか」は、別々に考える必要があります。
そこで選択肢の一つになるのが『配偶者居住権です。
『配偶者居住権』は、簡単にいうと、
「家を所有する権利」と「その家に住み続ける権利」
を分ける仕組みです。
たとえば、実家の所有権は子どもが相続する。
その一方で、母には『配偶者居住権』を取得してもらう。
こうすることで、家の所有者は子どもでも、母がその家に住み続ける権利を確保できます。
ただし、配偶者居住権にも注意点があります。
母の居住を強く守れる反面、その権利があることで不動産の処分は複雑になります。
たとえば、数年後。
母が施設へ移り、「もうこの家には戻らないから売りたい」となった場合。
配偶者居住権が残ったままでは、
「子どもが所有者だから自由に売れる」
と簡単に売れるとは限りません。
そのため、「母が亡くなるまで住み続けられること」を優先するのか。
それとも、「住まなくなったら売却しやすいこと」
を優先するのか。
家族で方向性を決めたうえで利用することが大切です。
⸻
⑥すでに母名義なら「家族信託」という方法も
一方で、「うちはもう、何年も前に父の相続で、母名義にしちゃった…」という方もいますよね。
その場合に考えたいのが、
「母が将来認知症になったら、この家を誰が管理するのか」という問題ですが、そこで選択肢になるのが『家族信託』です。
たとえば、母が元気なうちは、そのまま実家で暮らす。
将来、施設へ入ったり、子どもの家へ移ったりして実家が不要になったら、子どもが売却する。
売却して得たお金は、母の介護費用や生活費に使う。
こうした内容を、母が元気なうちに『家族信託の契約』で決めておきます。
契約で定めた範囲内であれば、母がその後認知症などで判断能力を失っても、受託者である子どもが実家を管理したり、売却したりできる仕組みを作れます。
「家は母名義のままにしておきたい。」
でも、「将来、認知症で動かせなくなるのは困る。」
という家庭では、検討する価値があります。
ちなみに、1つ注意しておきたいのが、「家族信託を始めるタイミング」です。
家族信託の契約を結ぶときには、母自身が内容を理解し、判断できる必要があります。
つまり、認知症が進んでしまってからでは、契約自体が難しくなる可能性があります。
また、家族信託は、「家族で紙に書いておけば完成」というものではなく、不動産を信託する場合には信託の登記が必要ですし、お金を信託する場合には、受託者個人のお金と混ざらないよう分けて管理する必要があります。
どの財産を信託するのか。
誰を受託者にするのか。
家を売却できる条件をどうするのか。
売却代金を何に使えるようにするのか。
将来、母が亡くなったら残った財産を誰へ渡すのか。
こうしたところまで、しっかり設計する必要があります。
そのため、実際に利用する場合には、司法書士や弁護士など、家族信託に詳しい専門家へ相談しながら進めるほうが安心です。
⸻
◾️結局、母と子ども、どちらが相続すればいい?
実家の相続では、「絶対に母」「絶対に子ども」と、一律に決めることはできません。
大きく分けると、
母自身がこれからも長く管理し、自分の判断で売却する可能性が高い
→ 母が相続する方法も検討しやすい
最終的には子どもが家を引き継ぐ予定
→ 最初から子どもが相続する方法も検討
という考え方になります。
ただ、私が基本的に第一候補として考えているのは、「最終的に子どもが引き継ぐ予定の家なら、子どもが相続する」という方法です。
理由は、
・二次相続を避けられる
・母の認知症によって家が動かせなくなるリスクを抑えやすい
・相続登記の回数を減らせる
・将来の管理主体を早めに決められる
からです。
ただし、その場合には、「母の居住をどう守るか」
まで必ずセットで考える必要があります。
必要に応じて配偶者居住権を設定したり、元気なうちに家族信託などを検討する。
実家の相続は、単なる「名義変更」ではありません。
親の住まいと、介護と、相続と、子ども世代の暮らし。全部がつながっている問題です。
だからこそ、「今、一番簡単な方法」ではなく、
「この先、家族がお互いに困りにくい方法」を選んでいきたいですね。
⸻
今回の内容は、YouTubeでも詳しく解説しています。
🎥【父が亡くなったら、実家は母と子ども、どちらが相続すべき?|配偶者居住権・家族信託まで解説】
https://youtu.be/9TWsWvx8wkA
そのほかの「家族とお金の悩み」に関する動画も、YouTubeチャンネルよりぜひご覧ください!
🌈 FPエミリー/家族とお金のモヤモヤ相談室 🌈
https://youtube.com/channel/UCM5yQJFLVhlx0Iv1OPT2Sdw?si=2AfJ9enOVQcCfL_i
ご質問やご相談は、公式LINEからお気軽にどうぞ!🔻
https://musubi-fp.com/archives/3990
Threadsでも、家族とお金の身近なモヤモヤについて日々発信しています🐈
https://www.threads.com/@fp_emirii?igshid=NTc4MTIwNj